調理室の必置規制は必要
北九州保育士会会長 藤岡佐視子
北九州市の保育所給食はカード方式による共同献立である。このカードには、ゼロ歳から就学まで、早朝から12時間余りの在園児との触れ合い、背景の家庭状況を把握した調理者たちの自慢レシピが、管理栄養士のチェックを受け、献立作成委員会で検討され毎年加えられる。人間形成期の食に携わるものとしての自覚も、この過程で育つ。
咋今の家庭の食卓は、局知される状況である。園生活の中に漂ってくる調理室からの食欲を誘うにおい、調理室の網戸に鼻をこすりつけるよう「おいしそう、いいにおい」「今日はレバーボールだよ」と叫んでいる。血抜きが面倒で家庭の食卓には出てこないこの献立が大好きである。
調理をしながら、そんな子供たちに笑顔で応答してくれる調理師に対して「ありがとう、おいしかった!」と感謝の言葉が自然に出てくる。
ところで、規制緩和委員会の少子化対策推進の中に「保育所設置者の負担を軽減する視点から調理室の必置規制を廃止すべきではないか」という論点が示されている。万一、これが実施されることになれば保育所の老朽化に伴う施設整備について、コストのかかる調理室設置を避けることも予測され、とすれば見過ごすわけにはいかない。
以前、社会福祉婦人懇話会に参加した際、食事を拒否して亡くなった餓死老人60人余の追跡調査をしたところ、そのほとんどが離乳期の食事に問題があったという報告を聞いた。
保育所保育指針の総則にも述べられているように「人間形成期の極めて重要な時期」の保育のあり方が、老年期に決算書として示されると受け取るのはうがちすぎた見方であろうか。
授乳、離乳とステップを踏みながら大人の食事に近づけるため、時間、質、量等、その子なりの心身の状態、家庭の背景等を視野に入れながらの自園調理方式は絶対に必要だと思う。
乳幼児期の食育を担う者としての確かな職業観を持ち、栄養士・調理師の資格を有する等の条件を満たすなら人材派遣等の導入も選択肢の一つとなるかもしれないが、養護と教育を一体とする保育所はホテルとは異なり、調理のにおいが漂い、調理を目の当たりにすることが大切で、忘れられがちな感謝の念も、そこから生まれるように思う。


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