児童の利益と規制緩和
北九州市保母会会長 藤岡佐規子
保育者たちは、子供たちによって与えられる日々の楽しさを感謝しながら、今、これでよいのだろうかと深刻に悩んでいる。
悩みの一つは、最低基準がなし崩しに崩されていく現実に対してである。なかなか解消されない大都市の待機児童対策として今年度から、年度当初定員の15%増、年度中25%増、あるいは都市型小規模保育所、分園などさまざまな規制緩和がなされ、園庭はなくともよい、有資格保育者や常動職員は3分の2でよいなどという。
児童権利条約を批准したこの国で、平成9年4月には、児童福祉法等の一部改正法案の採決に際して衆・参両議院共厚生委員会の名において“児童の最善の利益”の考慮が付帯決議されているのに、子供の育ちに必要な最低基準すら崩されていくのを黙って受け人れるつらさ。
二つ目は、市場競争原理では何事も消費者の利益のためにと正当化されるが、利用しやすい保育所が種々の間題を発生させている事実である。
先ごろ新聞に保育園でも「学級崩壊」とセンセーショナルに報道されたが、青少年問題を協議する会で、ある学者が「保育所は利用者の必要な時間にいつでも受け入れるべきだ」と発言したという。
最近、給食時間にようやく間に合うように登園する子供が微増している。朝から登園し遊びに熱中している仲間の中に入りづらく、人とかかわる力に間題を感じる場面も少なくない。そうした子供の頭脳の働きが活発になるのは他の子供の昼寝の最中である。保育者としては、この生活リズムの崩れに加担しているのではないか、学級崩壊のもとをつくっているのではないかと悩むのである。
あきず、あせらず、あきらめず、家族と子供をつなざ、共育ての努力をと保育者たちを励ましているが、心の通じなくなった親との関係を訴える保育者には、その子のため精いっぱいやったという思いの持てる保育をと話し合っている。
内橋克人氏は『日本改革論の虚実』で「規制緩和が美しい誤解によって一世を風靡し、やがて地獄を見ることによって初めて人々はその本質を知る・・・・・」と指摘したが、結果は20年後だ。 親子の幸福を基盤とした人間形成が先か、財政基盤の碓立が優先かを熟慮したいものである。


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