保育実践を支えた施設内研究会の取り組み

保育小論集

共励保育園の保育

保育実践を支えた施設内研究会の取り組み

八王子共励保育園
理事長 長田安司

はじめに

私達は共励保育園の保育実践をまとめ、保育・教育の大切さを広く、多くの人たちに伝えたいと思った。 折しも保育界は変革の嵐に見舞われている。人口問題審議会から発した問題は少子化対策・経済施策・労働施策としての保育園にさまざまな役割を担うよう迫っている。保育の問題は難しい。既に3世代にわたる「子育てのつけ」がさまざまな社会現象を起こしているからである。豊かな社会の実現によって失われたものの大きさに愕然としている。そしてその失われたものを、再度手に入れようとしても、非常に大きな困難を伴う現実を突きつけられる。学級崩壊、引きこもり、サイレントベビーなど、人間への基本的な信頼を失った子供たちの存在に、そしてそれが更に増えていく現象をどのように理解すればよいのだろうか。そういった中で保育園はどのような役割を果たすべきなのだろうか。現実事象に対応することの大切さはわかる。しかしそれらのほとんどが対症療法にしかならない。皮肉なことに行政施策によって社会が変えられ、その変えられた社会からまた新しい問題が噴出してくる。「いつから、子どもが恐くなったのだろうか!」などという公共広告機構のテレビ・コマーシャルの世界が近い将来現実のものになっていくのだろう。

本来子どもたちのことを第一義に考えて行かなくてはならない保育園がその本質を見失いつつある。労働施策が優先され、子どもたちの発達に見合った保育(教育)がだんだん失われている。役所に提出するためのカリキュラムはあるが、本当にそれが実践とリンクされているのか。新たに保育園に課せられたさまざまな役割を果たすことで精一杯で、基本的なことを忘れてしまっているのではないか。保育を考える時間も持てない。長時間保育のローテーション勤務で、チームとしての打ち合わせもできない。コスト削減で正規職員がパート職員に切り替えられる。何もパート職員が悪いと言ってるのではない。職員間のチームワーク、保育・教育を考えていく力が失われていくことが問題なのである。このままいったら、私たちの実践は続けることができなくなるのではないかという危機感がすぐ背中に迫っている。大げさではない。本当にそう感じているのである。

今回、私たち共励保育園は7つの実践報告を応募した。この応募は単に実践を伝えるということだけではなく、研究会の蓄積がその背景にあることを伝えたいと思った。

1997年英国ブレア首相が就任演説で「最も優先する3つの課題」を示した。「第一番目に教育!、第二番目に教育!、そして第三番目に教育!」と。

こういった国のリーダーの発言が困難の多い教育現場で努力を重ねている者の意欲を支えてくれる。NHKの特集・授業崩壊からの脱出では絶望的な教育環境を5年で改善したカルバート小学校のシャロン校長先生の学校改革のリポートだった。先生の教育に関する努力とそれを支える教育哲学は本当に賞賛に値する。エリザベス女王から名誉ある勲章を受けていたが、我々も後に続きたい。

1.共励保育園の保育・教育改革

1981・2年頃だったと思う。私たちは一つの大きな壁にぶち当たっていた。理由は分からなかったが、子どもたちに意欲というものが少しずつ欠けてきており、それまでの保育が通用しなくなったと感じたのである。以前では考えられなかったような現象が子どもたちを包むようになっていた。ちょうど「山口君ちのつとむくん」が流行した頃だっだろうか。

豊かな社会が持つ問題のさまざまな影響を受けた子どもたちは受動的な姿勢を身に付けてしまう。いくら素晴らしいと思った保育でも当の子どもたちが興味を示してくれないのではどうしようもない。「子どもたちがキラキラと目を輝かせ、意欲的に活動してくれるには、どんな保育がいいのだろう。」と私たちは真剣に悩んだ。そこで、保育を総合的にしてみようということが決まった。アイデアの元はマサチューセッツ工科大学のシーモア・パパート教授が編纂した「ミミ号の航海」や名取弘文先生の「おもしろ学校開校式」アリゾナ州立大学教授・バーバラ・アンドレス教授の乳幼児に対する音楽教育、イギリスの「劇を通した教育」などの総合的活動である。それまで系統的・領域別にガッチリ組まれた保育を崩し、一度、見る目を子どものサイドに移し、子どもたちの遊びや生活から興味のありそうなテーマを選び、それにもとづいて保育を組めばよいかもしれないと考えた。これが総合保育を開発する出発点での議論だった。

当時は学校や幼稚園においても教育に対する考え方について変革の時代を迎えていた。新しい教育や保育方法が模索されていたと思う。1990年には幼稚園教育要領がそして保育指針が改訂されたが、今から思うと問題性の認識は時を同じにしていたのかもしれない。

1986年の2月に「共励保育園カリキュラム改訂計画」と題し始めて主任と園長による研修会を持ち、自分たちの保育の整理を始めた。
当時の資料をめくってみると、次のように記してある。


日時 昭和62年2月21日(土)・22日(日)
場所 日本私学教育研究所 八王子市楢原町1262
参加者共励保育園各施設 園長・副園長・年齢別主任 全約20名

  1. 目的(自主性のある子どもたちを育てるために)
    • 昨今の激しい社会の変貌はいろいろな変化を子どもたちにもたらしています。特に心配なのは意欲に欠ける子どもたちの出現です。全てのものが便利になり、自らの身体を使わずに済んでしまうような社会ができつつあります。今までの保育を洗い直し、次の時代に対応できる保育を構築し、意欲のある自主的な子どもたちを育てることを目的としてカリキュラムを改訂したいと思います
  2. カリキュラム改訂のポイント
    1. 言語と数の保育の系統性の大切さを再認識する。
    2. 保育内容を精選し、ミニマム・エッセンシャルを確立する
    3. 保育に余裕を作り、子どもたち自身が判断したり、決定する幅を多くする。
    4. 遊びから学ぶ保育を完成する。

いよいよ具体的な改革に着手した。始めに年間の保育日数を計算し、それから大きな行事、それに必要な日数、小さな行事などを差し引くと、何か目的をもって取り組める保育時間の少なさにびっくりさせられた。

当時利用させていただいたのはKJ法と曼陀羅であった。KJ法といっても、それほど大したことはしなかったが、雑多な大量の項目を整理するにはとても有効な方法であった。たった第1ラウンドをこなすだけで、大体の整理ができ始める。カリキュラムを組む上で必要なことをカードに一枚一件の内容で書き、それらのカードをグループ化し、名前を付け、それを大きな模造紙に張り付けみんなで眺める。たったそれだけで、参加者全員が問題を共有できるようになる。そして、マンダラを使って、それらの問題から基本コンセプトを考え出したのである。

マンダラ図_元気掲載用.gifマンダラ(曼陀羅)というのは9個の枠の中心にテーマとなる項目を中央に書く。それから「の」の字を書くように重要と思われる案件から順番に記入していき、関連事項を考えながら加えていく。テーマを中心として大切な8個の項目が重要度順に並べられ、一覧できるという寸法である。これでひとつの保育の大切なコンセプトが描かれるのである。(創造性を高めるメモ学入門・今泉浩晃著 日本実業出版社)
この段階で、大切な行事は意味づけられ、雑多な行事は整理削減された。

以下はその研修によってまとめられた内容である。
意欲を求めて
(保育所の役割 昭和62年2月 共励保育園主任保育士研修会まとめ)

  1. 社会の変貌
    1. 豊かさの生んだもの(豊かさから生まれる貧困)
      • 不足のない生活・食欲の無い子・意欲のない子・連帯や協力のいらない社会・個別化傾向に拍車がかかる。
      • 現代の社会が家族を弱める方向に向かっている。
      • 子どもを育てる能力が弱体化してきた
    2. 子どもたちを取り巻く環境の変化
      • 子どもたちの遊び環境の変化
      • 大量の消費者として経済の中に組み込まれた子どもたち
      • 身体や五感を使う機会や感動することが少なくなる
      • 欲望が増幅され、遊びや要求が画一化される
      • 外部からのプレッシャーが強く、受動的な子どもを育成してしまう傾向が増大する。
  2. 保育所の役割の見直し
    1. 保育所の役割を「保育に欠ける子どもを保育する」という消極的な姿勢から「健全な社会を創造していくために」という積極的な姿勢に変える
      • ベビーホテルのリポート(堂本暁子氏)のもたらした影響
      • 幼保一元化・子どもの数の激減がもたらした影響(措置費の獲得戦争)
      • 結果・体制はそのままで保育所がカバーする範囲が拡大された。
      • しわ寄せが保育士に、そして子どもたちに
      • 子どもは歪んで育てられると、無気力や粗暴・非行といった形で社会に復讐する。
      • 保育所は良い社会を作るための礎。社会の病理を積極的に予防する機構として考えられるべきである。
  3. これからの保育所(豊かで個別化傾向の強くなる社会での保育所のありかた)
    1. 子どもを保育する
      1. 保・・・子どもを守り、心身共に健全な発達を保障する
      2. 育・・・発達段階に見合った保育・教育を遊びや集団活動を通して施す。
        • 保育所は集団を体験できる大切な場所
        • 現在の生活を生き生きと楽しめる知識、技術を身につける場
        • 基礎技能の獲得
        • 遊びを遊ぶ技術の獲得
        • 将来、社会に適応できる知識、技術の基礎を身につける場
        • 親子で楽しむことのできる技術を身につける(家族の強化)
        • 自尊心を大切にし、勇気をもってものごとに当たれる姿勢を育てる・意欲を育てる
    2. 家族を応援する
      • 家族を強める
      • 親子のつながりを強める機会、技術、情報などを提供する
      • 子育ての技術や情報を提供する
      • 家族間の交流や情報交換の場を提供する
      • ネットワークを組んでいく
      • その他
    3. 地域社会を豊かにする。エ.家族の強化について、オ.親の友人や親戚などの関係を広げるなどについて
  4. 保育の見直し
    1. 設定保育について
      • 設定保育で得た知識や技術が何らかの形で子どもたちの生活を生き生きさせ子どもたちに自信を与えるようにしたい。
      • 設定保育で得たものが自由遊びの幅を広げ、子どもたちの生活をいきいきとさせる。
      • 設定保育の3つの形
        1. 基礎的な知識や技術を身につけるもの
        2. 身につけた知識や技術を使って自由な力を発揮するもの
        3. 見たり、聞いたり、動いたりする経験を通して、子どもたちの興味や世界を広げるもの
    2. 設定保育のメリットを生かし、ディメリットを補う
      • 保育士と子どもたち、子どもたち同志の間の関わりの直接性を広げる
      • 小グループにする
      • 個別的な保育の場をつくる(コーナー保育)
      • 自由遊びを強化する
      • ゴッコ遊びの大切さを認識する
      • カリキュラムの系統性を保育士が身につける(研究会の重要性)
      • 歌遊びの普及・その他

主任研修で問題を討議し、整理したものをその年の4月の合宿研修で他の保育士に学んでもらい、実践に取り入れてもらう。共励保育園は八王子市に全部で3施設ある。保育士だけで70人はいる。現場の保育士全てに検討した問題を伝えなくてはならない。やがて、何年か経過していくうちに、混沌としていた問題は次第に整理され、徐々に新しい道が開けてきたようだった。現在では、保育を展開していく上での大切な事柄が整理され、施設内文書資料として冊子にまとまっている。

  • ミニマム・エッセンシャルズ
    • (年齢・領域別に基本的な保育の最小のねらいを整理したもの)
  • 言語の教育
    • (0歳から5歳までの言語の教育の内容とポイントをまとめたもの)
  • 数の教育
    • (0歳から5歳までの数の教育の内容とポイントをまとめたもの)
  • 劇遊びの基本的な考え方
  • 保育展(作品展)の基本的な考え方
  • 1年の構成(7期に分けた保育の目的と特徴を記したもの)
  • 模擬保育・口上書集、保育データ・その他

「遊びながら学ぶ」保育を基本にし、その裏側に教育として大切な言語・数・基本的な技能・絵画・造形・音楽などを組み込んでいった保育は、やがて、少しづつ形を見せるようになってきた。とはいっても、現実は山あり谷ありで、遊びを中心にしたカリキュラムを組んでいくと、言語や数の教育の大切な部分がおろそかになるし、保育士も少しづつ代わっていくので、研究会では行きつ戻りつを何度も繰り返した。総合保育では裏側にある教育のポイントを保育士が押さえていないと、「楽しかったね、でも何を学んだの?」ということになりかねない。教育に積み重ねと系統性を持たせながら実践していくことは非常に難しかった。

2.共励保育園の研究会

共励保育園の研究会は次の5つで構成されている。

ア.合宿研修会(4月、9月に行われる)

  • ここでは総合保育が計画・検討・修正されていく。

イ.土曜日の午後に行う研修(毎月1回)

  • ここでは年間テーマを持って、具体的な保育実践に対する技術や理論を学んでいく。

ウ.夏期研修

  • ここでは、外部からの講師をお呼びしたり、保育の世界では得にくい体験をする。

エ.新人研修

  • 主任保育士から総合保育の作り方を演習し、新人に基礎知識を伝える。

オ.主任研修

  • 2月に行われ、その年の問題点を討議したり、基本的な方針や次の年度への取り組みなどが議論される。

この研修会が共励保育園の保育改革を推進してきた。

それでは、順に細かく説明していき、その内容や意味をお伝えしたい。

ア.4月・9月の合宿研修会

毎年4月の第二土曜・日曜日に共励保育園三園の保育士が一同に会し研究会を行う。その研究会でその年度の総合保育が作られる。土曜日には夜遅くまで総合保育計画表(別添 )が検討・作成され、日曜日には朝から一つ一つその年の作品が説明される。説明を担当する保育士は何人かでチームを組んで、他の参加者に内容を説明する。基本的には総合保育計画表をプロジェクターで大写しにし、一人の保育士がそれにそって説明をしていく1チーム約15分のプレゼンテーションを行う。時間に制限があるので保育士は事前に説明を文章化しているようだ。サブの者は、必要な保育教材やアイデアをまとめたノートなどを、説明者の指示に従って提示していく。

こうして、参加者全員はみんなの考えやアイデアを交換(シェアリング)しあう。この2日間かけてやる研修会は秋(9月の第一土曜・日曜日)にも行われ、そこでは、途中経過として、問題点の指摘、反省点などを報告し、変更点を含めて年度の終わりまでの計画をまとめて報告をする。総合保育については、園のパンフレットにつぎのように記載されている。


総合保育について

『この保育は1988年頃に共励保育園の研究会の中からできた保育です。保育士は年の始めにゴッコ遊びを考え、1年間の物語を作ります。その物語にはいろいろな出来事が起きますが、その出来事の中に「数」「言語」「絵画」「造形」「基礎的な技能」「感性」など、子どもたちの「見る力」「聞く力」「感じる力」「考える力」「判断する力」「相手に伝える力」「表現する力」などを育てる大切な要素を仕組ます。

総合保育の面白い点は、この仮想の物語の中にリアルな世界を作り上げることができることです。子どもたちは仮想の世界に遊びますが、同時に現実の世界の出来事を体験することになります。その物語は子どもたちが自然と必要なことを学ぶように仕組まれていきます。子どもは必要が出てくれば、自ずとその必要なことを手に入れようとします。子どもたちはゴッコ遊びに夢中になりながら、遊びに必要な技能や知識を学んでいってしまうというわけです。

一方、総合保育を組み立てる保育士は子どもたちの年齢の発達の特徴を知っている必要があります。共励保育園の基本カリキュラムは領域別に年齢の発達を考慮してまとめられてありますので、それらをベースに物語を組み立てていきます。ただの遊びではなく、遊びながら学ぶです。保育士も自分のねらいを上手に組み入れることができると、その年は満足感の高い一年となります。ごっこ遊びが子どもたちの中に深く入り込むと、子どもたちにとっても保育士にとっても、一年間が楽しく意味のある展開となります。』

総合保育のテーマには、必ずしも物語だけでなく、「自分」「心の問題」「野菜」「色」などさまざまだ。とにかく何でもテーマとして取り入れることができる、年間を通して計画をする保育の一形態と定義したい。

総合保育もずいぶん検討・修正されてきた。この総合保育はややもすると、楽しかっただけの保育になりがちである。子どもが意欲的取り組んでくれるのは良いのだが、その裏で、きちんとした知識や技能の蓄積が図れないと、子どもたちの世界は広がらない。今年も15の総合保育の作品がスタートした。いままで実践された作品は150を越えるかもしれない。


イ.土曜日の午後に行う研修(毎月1回)

この研修は年度によってテーマが異なる。平成11年度は数の教育について継続的に学んだ。平成12年度は言語の教育について学んだ。学び方は「模擬保育」といって年齢別に保育のねらいが提示され、そのねらいを実現する保育を考え、その保育を研究会で発表しあう。担当グループで保育を考案し、その保育を実際に子どもたちに試してみて、その後研究会で発表する。その際、口上書というものを担当保育士は書き、それを頭の中に入れて、保育の前に説明する。こういう経験を経て、保育士は第三者に向かって意味の通る話し方を学んでいく。
開発された保育のいくつかをご紹介しよう。

<絵カルタ>

2・3歳児が好んで行う絵カルタ。サルをテーマにし、「サルがリンゴを食べています」「サルが歯を磨いています」「サルが走っています」「サルが寝ています」などサルが主人公でいろいろな動きを表した絵カードを10種類、一つの種類を各4枚、合計4セット・40枚を作る。一つのセットは読み札。残りは床にならべてカルタのようにして遊ぶ。最初は保育士が読んで、子どもたちが拾う。よく聞かないと、カードの登場人物はみんなサルだから、サルがどのようなことをしているかを聞いて判断しないとカルタは取れない。そのうち、子どもたちは読み手になることができるようになり、保育士がかかわらなくても遊べるようになる。つまり暗記してしまうのである。床や机に並べる絵カードは同じカードが3枚並べられる。これによって同時に3人までの子が取れるようになる。

<さいころの目はいくつ?>

3歳児で好んで行う。これは単純にサイコロを転がし、細長い紙に印刷されている6つの○を、出た目の数だけ色鉛筆で塗っていくという遊びだ。非常に単純な遊びだが、3歳児は砂場遊びで遊ぶように好んで遊ぶ。知らず知らずのうちに数の世界を知っていくところが良い。

<くるくるしりとり>

自分の名前の文字をきっかけにして、ひらがなを読もうとしてくる。面白いことに自分の名前に加えて15文字程度、合計20字ほど読めるようになると、一気に清音全部が読めるようになってしまう。字並びから類推して文字を覚えてしまうのだ。これは調査で分かった。その頃に「言葉みつけ」を楽しむ。その日のテーマの文字(例えば「と」)を保育士が提示すると、子どもたちは「と」のつく言葉を考える。「とけい」「とり」「とまと」などクラスのみんなからいろいろな「と」のつく言葉がでる。文字を構成して言葉を作っていくことを伝える。そうなった段階で「しりとり」のルールを伝える。そのルールを知った子どもたちは、ルールを頼りにいろいろな言葉を考える。画用紙をフイルムのように細長く切りそれを縦に使う。一枚のフィルムには4コマの四角と、右に文字が書ける空間を用意する。一つ思いついたら一番上の左の四角の中に絵を描き、対応する言葉をその絵の右にスタンプで押す。次にはしりとりの要領で、前のことばの最後の文字で始まる言葉を考える。考えついたら2番目の四角に描く。そして次々と・・。1枚のフイルムが終わると、次のフイルムをつなげていく。どんどんつなげていって満足すると、トイレットペーパーの芯の中に丸めて入れ込む。フイルムのケースから飛び出た部分を引っ張るようにしていくと、中から順に自分が描いた絵とその絵に対応する言葉(文字)がでてきて、それがしりとりになっている。くるくる回しながら紙を引き出し、しりとりを楽しむので、「くるくるしりとり」である。この活動はとても4歳児に好まれ、とても長い作品ができる。

<はなまるポン>

数の遊びである。1から5までの赤●を描いたトランプのようなカードを30枚つくる。(0の場合は何も描かない)対戦者は机を間にし、向き合うように坐る。机の真ん中少し右側にタオルを用意し、その上にカスタネットを置く。「はなまるポン!」と歌い、最後の「ポン!」のところで、自分の持っているカードの一番上を机の中央あたりに開く。すると2枚のカードが揃う。その2枚のカードの数の合計が5になったら、カスタネットを叩くことができる。どちらか早くカスタネットを叩いた方が、机の上に順にたまっていったカードを全て取ることができる。どちらか一方がカードがなくなったら試合終了である。このようにして遊びながら数の合成遊びを行う。数の世界には「数・量・空間・論理」の世界があるが、そのうちの数である。

5歳児になると、世界は一変する。鬼ごっこなどをしても、鬼(先生)との関係を強く望み、わざわざ鬼に捕まってしまうような鬼ごっこから、最後まで生き延びようとする鬼ごっこに変わっていく。ここに価値がでてくる。文字を使って楽しく遊ぶようになる。ある程度の文章だったら読めるようになる。まだまだ一字一字よむ「ひろい読み」の段階の子もいるが、すらすら読める子も出てくる。川柳や逆さ言葉、駄洒落なども楽しむようになる。因果関係を捉えたり、あるものをヒントに見えないものを考えたり、推理したりするようにもなる。そういった年齢にあった、知的好奇心を育てるような保育が必要である。共励保育園では子どもたちの発達に合った、子どもたちが繰り返し好んで遊ぶオリジナルな保育をたくさん開発するよう努力を重ねている。

<カリキュラムを見直し>

平成13年度は言語のカリキュラムを見直した。内容を精選する方向で検討しようとした。当初、半年位でできるかなと思ったが、保育士の取り組みが、現場の状況を根本からの見直す形となったため、1年以上かかってしまった。しかし、それによって、経験の浅い保育士でも、読めば理解できるカリキュラムが作成できたのではないかと思っている。加えて、言語カリキュラムの中に自分づくりという大切な核を組み入れることができた。これで園のパンフレットに書かれたものと実践とが一致できる。詳しい内容は、大沢敬子主任保育士が今回の読売教育賞に応募している。

ウ.夏の研修

毎年夏には新しい技術を獲得するための研修を行う。ある時は「マルチトラックレコーダーによる録音・音声合成技術」を学んだ。これは12月の活動発表会で劇遊びに展開していくときに、音楽や効果音づくりに効を発する。「はなまるラジオ」のチームはこれを活用している。ヤマハのキーボードを学んだ。これも劇遊びに活用されている。まついのりこ氏・井出和子氏を招いて、紙芝居をテーマにしたワークショップも開いた。総合保育を展開するときの資源として紙芝居はとても豊富な材料をもたらしてくれる。

「右脳で描く」として古橋桂子氏(保育とアートを考える会)を招き、畑から取れたばかりの根っこのついた新鮮な大きなキャベツを見えるように描いた。クレパスでの画法を学んだが、保育士が描いた作品が2月の保育展に一堂に展示された。またあるときは、劇団風の子の演出家・関谷幸夫氏のワークショップを行い、芝居を作るための発想の引き出し方などを学んだ。とくにお手玉から自由について学んだことは印象的であった。

これらは、総合保育を展開していく上で、基礎的な素養として学ばれた。忙しさのあまり、なかなか世界を広げることができない保育士なので、意識的にこうした場を通して、知らない世界を提示するのである。シルクスクリーン、コンピューターでの紙芝居づくり、ボディ・ランゲージ、劇団ヒポポタアム主催・永野氏の指導による「人形作り」、ロバの音楽座・松本氏による「音探し」など、とにかくいろいろ学んだ。

エ.新人研修

これは2月の保育展の後に行う。主に新採用の保育士に共励保育園の総合保育を学んでもらう。まず最初に共励保育園の保育に対する基本理念が説明される。その後、主任保育士からそれまでに実践されてきた総合保育が一例として紹介される。カードを使った考えをまとめる活動(KJカードのまねごと)をした後、新人それぞれにカードが100枚が渡され、自分が子どもたちと行ってみたい保育を1枚のカードに1件の内容をカードに書いて来ることを宿題とする。次の日にはそのカードを使って、その人なりの総合保育を創る演習を行う。一人に一人の主任保育士や園長がつく。その日の最後にはどうにかまとまったものをみんなに発表して終わる。できるだけ、達成感を得られ、自分の力で立ち向かっていけるように、いろいろ援助するのが園長や主任保育士の役割である。

オ.主任研修

この研修は共励保育園で一番大切なものである。その年の問題点を討議したり、基本的な方針や次の年度への取り組みなどが議論される。特にこの研修が牽引力となって改革は行われてきた。1986年から改革に着手し、「意欲を求めて」という考えから、それまでの保育を見直してきた。その内容は既に述べたが、ここからいろいろな改革が生まれてきた。主任保育士は全部で12名いる。みんな経験15年を越えている。中には25年・30年の経験者もいる。それらの人たちが単に経験だけを重ねたのではなく、若い保育士たちと一緒に保育を進めながら、若い人たちを育てている。だからこそ、蓄積ができていく。保育園は施設内研修やO.J.T.でチームで協力しながら職員を育てていく体制を組むことが望ましい。みんな自分の仕事を通して成長していく。まだまだ自信が持てない若い保育士には研修で教育し、チームの協力体制で応援する。これが一番良いと思っている。

3.研究会で検討され、変革されてきた保育・行事

さて、昭和62年2月に始まった改革でいろいろな保育や行事のあり方が検討された。
ここではそのいくつかを紹介する。

ア.年長のお泊まり保育

年長のお泊まり会では、1川遊び、お料理、そして夜のゴッコ遊びである。

川遊びは隣のあきる野市の秋川に行く。虫探しや魚採り、カニなどもいる。自然たっぷりのこの環境は得難い。ひととき遊んだ後は、向こう岸の岩場から飛び込む。全員がである。勇気のある子は2メートルの高さから。まだまだの子は30センチの高さから。それでも自分の意志で自分の足で立ち、心を決めて水に飛び込む。みんなに応援されて飛び込む子もいる。なにやら飛び込むことに快感を覚え、何度も何度も挑戦する子も出る。
川遊びから帰って、お昼寝が済むと、自分たちの夕食を準備する。たいてはカレーライスだが、時にはおむすびやみそ汁などを作ったりする。フルーツも盛り合わせたり、ハンバーグなどの献立もある。そのときの子どもたちのリクエストで料理するものが違う。タマネギを切りながら、涙を流す子、包丁で指を切って涙を流す子、手に塩水をつけないで、手が米粒だらけなって当惑している子。マヨネーズがやけに好きになって、ちょっとづつ容器から絞り出してはなめている子。料理風景はさまざまである。どんな料理であれ、自分でつくったものは美味しい。みんなよく食べる。

夜のごっこ遊びについては「銀河の夜バスツアー」として羽生奈保美保育士が応募している。

イ.運動会

川向こうのグランドを借りて、家族はもちろん、お爺ちゃん・お婆ちゃん、親戚の人など一家総出で楽しむ。毎年、全体では1500人あまりの参加となる。卒園生も毎年150人は集まってくる。堤防の上にはテキ屋さんが出店するくらいだ。

走る、跳ぶ、引っ張るなどの基本的な運動能力を高める種目が多い。音楽的なものは年長児のハモニカ合奏(マーチングバンド演奏)がある。このハモニカは年長児になってからできるので、年中の子たちはいつもうらやましそうに見ている。指導法が確立しているので、秋にはほとんどの子が演奏できるようになる。イエスタディ・ワンスモアやオブラディ・オブラダなんかも演奏できる。最近ではやけに自信がついてしまって、プロのハモニカ奏者の人たちとセッションをしたときなど、対等に渡り合っていた。プロの人たちも、保育園だから「お星様かメリーさんの羊」程度だろうと高をくくっていたが、ビックリされたようだ。自分はハモニカが上手にふけるんだという自信はこの年齢の子たちにとって、かけがえのないことだと思っている。運動会での子ども達のハイライトは年長組のリレーである。これは文句無しに感動する。一周100メートルあまりを全速力で走る。腕はよく振れ、足もよく上がる。抜きつ抜かれつのレースは見応えがある。負けると泣く。この悔しさが大切だと思っている。

子どもも頑張れば、親も頑張るである。共励保育園の運動会の種目は親だけの種目が4割。子どもだけの種目が4割。後の2割は親子である。こうすれば、運動会のための特別な練習なんかは、あまりする必要がなくなる。
親の種目は、

  1. 綱取り合戦。これは5本のロープを2つのチームが奪い合う戦い。総勢120名の男女が入り乱れて綱を奪い合う壮絶な戦いである。10年ほど前はあまり心配もなかったが、ここ最近はこういった危険な戦いは心配になってきた。夢中になりながらも適度な調整が自然とできていた世代から、あまりこのような乱暴な経験をしていない人たちが親になってきている。保険は入っているが、けが人が多くなったので、種目の変更を検討中である。
  2. 関ヶ原の合戦。これは洗濯かごを頭からかぶり、その洗濯かごの上(底)につけてある風船をビニールのハンマーで叩き割るといった内容だ。これまた壮絶。多くの敵に囲まれた場合には逃れようもない。男女の差なんかは言っていられない。男女共同参画化会議最先端の種目である。
  3. パラシュートを運ぶ突撃パラシュート部隊。パラシュートといっても本物ではなく、リズム遊戯に使うパラシュートを改良して、二人で運べるようにし、それをリレーするのである。3つのパラシュートがグランドの東から西へと移動し、タイヤが置いてあるところを回ってくる。

これは午後に行うと風が強くなって更に面白くなる。自分の番が終わったからといって迂闊にはしていられない。パラシュートが行き来する度に自分のそばを通る。ぼやっとしていると、パラシュートの中に引き込まれて引きずられてしまう。チーム全体が協力すれば、非常に早く陣地を回ることができ、次のメンバーに交代することができる。不注意なメンバーがいるところでは必ずひっかかる。パラシュートは直径9メートル程。風を切って進むと一種の陶酔感が味わえる。

こういった全員で行う競技に加えて、ハイライトは代表が出場するクラス対抗リレーである。1チーム6人。男性2人・女性4人。その中には保育士も入る。まず、男性がグランドを一周とちょっとを走る、約130メートル位の徒競走。走ってきたお父さんをお母さんが工事現場の一輪車で半周運ぶ。次はビヤ樽転がし。樽の左端に位置し、左手と右手の微妙なバランスが樽を上手に転がすコツである。そしてムーンカート。これは子供用の足こぎ自動車だが、大人でも十分楽しめる。これで半周すると、いよいよグランドの中央に置いてある4メートルの高さの棒に登る。そして先端の風船を割る。この丸太棒には太さの違いがあり、早いチームから順に難易度の高い棒を登ることになる。これはお父さんの担当。この棒はよく乾燥していて滑る。残りの5人と役員さん一人が加わり棒を立てる。それにお父さんが登って風船を割るのである。せっかく一位で来たのに、ここで引っかかる。登れない事態が起こると一気に最下位となってしまう。ある年など、お母さんがピンチヒッターに出て、やっと登り切った。女性が頭脳・体力とも勝る時代が来ている。その棒を登り終えて見事風船を割ると、最後に全員でムカデ競争だ。長い連結された下駄を、みんなで声を合わせて半周してゴールする。半周といっても50メートルはある。ゴールに入るとみんなどっと倒れ込む。疲労困憊である。しかし、これで勝つと本当に嬉しいらしい。みんな手を取り合って、万歳をする。

以上は予選である。午前中、6チームづつで2試合行い。それぞれに勝ち残った3チームが運動会最後のクラス対抗リレー決勝に進出する。予選の結果を見た上で予想投票ができる。参加者全員が予想し、一人一票で優勝チームを予想するのである。優勝したチームに投票した人の中から6名に秋田小町新米10kgが当たる。これは嬉しい。

お昼のお弁当の時間となる。家族が集まって、この日のために用意したごちそうをぱくつく。家族が揃う。いろいろな話で湧く。お父さんが子どものがんばりを誉め、子どもはお父さんの偉大さを感じる。みんな嬉しそうである。卒園した保護者の方も共励保育園の運動会には参加しに来る。刺激的で面白いのだそうだ。共励保育園の運動会は危険がいっぱいである。でもその危険が魅力を増している。怪我をしても「先生、自分の責任だから、心配しなくていいよ!」と言ってくれたりもする。ありがたいことだ。親子の種目も楽しい定番がある。親子で行う4歳児の騎馬戦はとても良い。大人3人で騎馬を組み、それに子ども一人が乗り、敵の帽子を奪い合うのである。これには親心が働いて、とても嬉しくなる。載った子に合わせて、攻撃を中心にしたり、逃げることを中心にしたりする。親の子を思う気持ちがでるほのぼのしたゲームである。子どもたちは大人の騎馬に載ることだけでとても嬉しいらしい。みんなにこにこしながら競技を楽しんでいる。

朝9時から終了は3時少し前。みんなでラジオ体操をし、解散する。一日がかりの大きな行事である。みんな幸せで、みんな充実した顔になる。こんな運動会は、多くの保育園から消えてしまいつつある。日曜日に運動会を行っても保育園は翌日を振替休日とすることができない。そこで多くの保育園は運動会を平日に行うようになっているようだ。それも半日で運動会を終了するようである。残念なことである。しかし、昔ながらの運動会、みんなが夢中になる運動会は残したいものである。

ウ.活動発表会

運動会を終えて12月の中旬までの2ヶ月間。子どもたちはごっこ遊びを楽しむ。年齢によっては、そのごっこ遊びを少しづつ劇遊びまでに広げていく。子どもたちはそれまで知り得たいろいろな技術や知識を使って、自分たちの劇の世界を作っていくのだ。共励保育園では1歳児から5歳児まで系統的に基礎的な技能や知識を蓄積していく。この2ヶ月はそれらを総動員して創作的な活動が展開される。内容は年齢によって大きく違う。平成13年度の劇遊び「フルーツ島の決闘」は、なかなか面白い実践であった。これについては小川香里保育士が今回の読売賞に応募している。

エ.保育展

毎年保育展は2月の第2週の日曜日に開催される。最初は作品展としていたが、1年間の子どもたちの教育的な体験から創り出された作品や、当日繰り広げられるいろいろなゴッコ遊びのことなどを考えると、単なる作品展ではなく、保育展としたほうがいいのではないかとみんなで話し合って決めた。基本的には総合保育が中心となり、一年の活動が展示されるが、それ以外の活動で創り出された遊びや作品なども展示される。最近では、お父さんやお母さんの応援をお願いした数遊びや占いコーナーなども加わる。共励第二保育園の総合保育「はなまるラジオ」では子どもディスクジョッキーなどが行われたが、単に作品を見るだけでなく、みんなが参加できる、来て、見て楽しい保育展にしている。保育展の前には、説明を園便りで伝える。

園便りから:保育展の正しい見方

  1. 0歳のひよこ組から順に1歳、2歳3歳、4歳、5歳と展示を見ましょう。(省略)
  2. 子どもを学年といったような、短い時間の範囲で区切らず、タイムスパンを広げてみましょう。(省略)
  3. 子どもに保育展のガイドになってもらいましょう。
    • 子どもの話を聞くという姿勢で保育展を鑑賞してみてください。できれば、子どもにガイドになってもらい、保育展の解説をしてもらいましょう。意味のある一日が過ごせることと思います。同時に子どもの隠れていた、素晴らしい面を見つけることができるかもしれません。子どもの解説を我慢して聞き、真剣にうなずいたり、感心したり、時には大笑いしたりしましょう。
  4. しおりの見方(省略)
  5. 保育展は最低3時間はかけて見る。
    • その日にお出かけなどの用事をつくることは、保育展の美味しい部分を見落とすことになります。最近の傾向では、保育展を遊園地に行くような気分で一日を過ごされる方が多くなってきています。また、子どもたちも時間を合わせて集まって何かをするようになってきていますので、みんなで何かをするといった楽しみが増えました。ゆっくり時間をかけると発見することも多くなります。(中略)時間をたっぷりかけて、心を注いでください。ご家族そろって、保育展をお楽しみください。お陰で、4時間も保育展を楽しむ親子がでてきた。内容が多いので、来年から食事ができるコーナーを用意してもらいたいとの希望がアンケートにでていたほどだった。

「ゲーム王国」

最後に、総合保育「ゲームゲーマーゲーメスト」の保育展での取り組みを紹介しよう。この年は子どもたちみんなで保育展に「ゲーム王国」を作ることになった。材料は段ボールが中心。それに子どもたちがいろいろな仕組みを組み込んだゲームを作ったのである。

まず入り口を入ると、壁には総合保育の説明がしてある。そしてワープゾーンに入る。電車の内部のようになっていて、吊革がぶら下がっている。電車はやがて(自分で電車の中を歩いて進む)ゲーム王国に着く。一気にゲームの世界に入り込む。いろいろなゲームがある。的当てゲーム「まとガチャ」「じゃんけんゲームマシーン」「もぐらたたき」「かいぞくゲーム」「プリクラ」「ボーリング」「オセロ」「お宝釣り」「バイクゲーム」。イベント広場には「ビンゴ大会」が計画された。お客さんは大人であり、ゲーム王国の人たちは子どもである。「もぐらたたき」は次のように展開された。おおきな冷蔵庫の段ボールをつないで大きな箱をつくる。天井部に穴をいくつも空ける。その穴からもぐらならず、子どもたちが顔を出す。それを大人が手に持った柔らかいハンマーで子どもたちの頭を叩くのである。いくつ叩けたかを用紙に書いて、数遊びを楽しむゲームになっている。「プリクラ」がしゃれている。前に立つとプリクラの中いる子どもたちが「何番にしますか?」と聞く。番号によって、顔を飾るパターンが違っていて、その中から選択できるようになっている。例えば1番を押す。すると、お姫様が選ばれる。少々お待ち下さいと言われる。待っていると、何だか中でがさごそしている。上から覗いてみると、何と、担当者二人が一生懸命プリクラを色鉛筆で描いている。1分ほどすると、正面の受け皿のところから、お姫様になったお客様が描かれ、プリクラとして出てくる。パターンとしては、「うさぎ」「ぱんだ」「ぴかちゅー」といったものが用意されていた。

描いたり、切ったり、貼ったり、いろいろな技能を共励保育園では学ぶ。積み重ねた技能を使って子どもたちは遊びに展開する。自作のゲームマシーンに子どもたちは夢中になる。この時期、子ども達はゴミ箱を漁るようになるそうだ。ゴミ箱の中に箱など入っていたら、「もったいない!」などとつぶやきながら、箱を取り出して、それを工作の材料にするらしい。このような家庭からの報告もあった。

以上が、研究会によって改革されてきた保育内容である。まだまだたくさんある。今回は記述しなかったが、3歳未満児の生活のカリキュラム改革もこの研究会で行われた。

4 おわりに

平成13年度に新しい保育園パンフレットを作成した。そこに書かれている保育方針を見てみると、根本的な方針に対しては16年前とまったく変更はない。これからもこの方針を貫きたいと考えている。加わったのは「自分づくり」(第一次自我の確立と社会的自我の育成)。「家族の役割」である。特に社会の基礎となる母子関係の大切さ、母親の役割、父親の役割、夫婦の役割、子どもの役割の大切さを訴えた。男女共同参画化など女性の社会進出が進んでいる。共励保育園は時代に逆行するのではないかとのご批判を受けそうだが、家族の大切さを思い、あえて掲載している。

家族は社会の基礎である。その家族が崩れてしまうようでは健全な社会は成り立たない。大切なものは大切であり、社会を健全に保つために必要であれば、保育園を仕事としているものにとって、その大切さを伝えなくてはならない。昨今の規制緩和で保育がビジネス・商売として考えられるようになるだろうが、子どもを育てる(自分たちの未来を創る)という大切な役割を担う我々としては、ことの本質を見失うようなことはしてはいけないと強く自戒している。

消毒薬で汚染されたリンゴを「虫も食わないりんご」として平気で市場にだす農家。狂牛病に右往左往し、ラベルを替えて補助金を手に入れる会社。生きていくためには必至なのかもしれない。しかし、こういった愚行は結局自らを滅ぼすことになる。自分たちの仕事は社会的に善の意味をもたなくてはいけない。16年前に考えた保育園のコンセプトがいまだに有効であるとしたら、社会は良い方向に動いていかなかった証拠である。残念である。日本の社会に将来のビジョンが見えず、政治や経済の混乱から絶望感に苛まれることが多い。

それでも、自分に与えられた仕事を、とにかくきちっと果たすことをしよう。そのことによって少しずつ希望の光が見えてくるのではないだろうか。そんな勇気を「オレンジの皮」(佐藤雅彦・毎月新聞第40号)から与えられた。何ヶ月も冷蔵庫に放置されたオレンジは皮も萎み固くなり、とても食べられる様相は伺えなかったが、切ってみると固くて薄くなってしわがれた薄い皮がしっかり中の身を守っていて、しぼってみるとみずみずしいジュースが取れた。著者は乾いた喉を潤すことができたことに素直に感動し、みんながオレンジの皮ののように、きちんと自分に与えられた仕事を果たせば、混沌とした社会でも未来が見えてくるのではないかと伝えている。これからも、頑張りたい。

社会福祉法人同志舎 共励保育園
理事長 長田安司

連絡先:
〒192-0046
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電   話:042-631-4670
ファックス:042-631-4671

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