都の福祉改革ステップ2に異議申し立てます!
都の福祉改革ステップ2に異議申し立てます!
今年の2月東京都福祉局は「福祉改革ステップ2」を発表した。保育対策の核心たる部分は大都市に顕著である待機児問題や保育のあり方を捉え、需要と供給のミスマッチを解消すること。特に近代都市東京は首都として経済的に主要な役割を持つ。その都市が機能し、その中で生活していく人たちを支えるには、保育を都市型に転換することが必要だと説いている。
都が進めていく施策の一つは、「子供が地域で健やかに育つために、東京の全ての保育園に0歳児産休明け保育や13時間以上の延長保育を実施する都市型保育を推進する」で、この方針を具体化するものが、都が推進している認証保育所である。これを起爆剤として都内に1400ほどある認可保育園を一気に都市型に変容させようということらしい。というのも2時間延長保育は民間で約5割、公立ではたかだか1割程度の実施となっており、東京都福祉局はこういった対応の遅れが待機児や保育問題の根源と考えているようだ。
しかし、こうした都市型保育が子どもたちにとって本当に良いのだろうか。夜型の大人の生活に保育が追随していく保育が良いとはとても考えられない。強力推進施策の一つが認証保育所の13時間以上の長時間保育なのだが、園庭の確保も義務づけていない。常勤の保育士も6割程度で良いらしい。私には駅小荷物預かり型・コンビニ保育園としか思えないのである。
一日13時間で月曜日から土曜日まで保育を受けたとすると週76時間である。大人の労働時間でさえ週40時間である。保育時間と開所時間は違うとの意見もあるが、限りなくその二つは近づいているのが現状だ。保育園が開いていればその時間を預ける傾向が強まっている。
欧米では週30時間あたりが長時間保育の概念らしい(米国NICHDサラ・フリードマン博士の報告から)。ある人がスエーデンで日本の13時間保育のことを伝えたら、「子どもは一日5時間です。」と言い切られたそうだ。前述のフリードマン博士の報告でも、親のセンシティビティと長時間保育(週30時間程度の保育)は、それほど強いものではないとしながらも逆の相関が見つけられたとのこと。これが76時間だったらどういう結果がでるのだろうか。こういった保育形態が親の子どもに対する無関心を呼んでしまうのだろう。やがてそうやって育った子どもは親を老人施設に平気で預け、また預けても預けっぱなしで見舞いにもこない大人に育つだろう。自分もそうして育てられたのだから。こうなるとこの問題は高齢者問題とも言える。ともあれ、週76時間もの長時間保育は幼児虐待と言えはしないだろうか。
同じ東京都ではあるが、児童環境づくり推進協議会の最終報告「子どもが輝くまち東京」(平成11年11月)では「子どもにとって良い保育とは」で、
- 長時間保育や夜間保育は子どもの負担。できれば親の働き方を変える方が望ましい。
- 0歳後半から1歳前半の時期は、特定の親しい人への愛着が強くなる時期である。
- 子どもの不安を少なくするために、保育者の頻繁な交代は避けなければならない。
- 子どもにとって望ましいのは親が育児休業をとって、ゆったりと子どもに接することである。
- 基本的に省略化や合理化できないのが育児である。
- など「子どもの視点に立った」ポイントが提言されている。
こうした考えが東京都に提言されていながら、福祉改革ステップ2では、これらの大切なポイントを全く考慮していない。認可保育園については、平成14年度から全てが常勤保育士を義務づけていた配置基準がクラスに一人以上(乳児室は二人以上)の常勤がいれば、後はパート職員で良いとした。これでは13時間の保育を実施した場合、3人の保育士が交代で対応することになり保育士の頻繁な交代は必至になってしまう。
こうした変革に良心的な認可保育所は都の施策実施に二の足を踏むのであるが、東京都はこうした保育現場の姿勢に業を煮やし、利用者のニーズに対応していないとし、株式会社などの企業も保育に参入させ、サービス競争を激化させ、一気に改革を目論んだのである。
この施策推進を強化するために、指導検査要綱を何度も改訂し、保育園の独自性や地域の特性を配慮するといった項目を削除している。青梅市の保育団体では今年3月の保育機関誌に都の指導検査を受けた感想として「従来では認められていたことが、認められなくなった」と苦情のようなものを述べている。そういった状況に加えて、東京都は平成14年6月19日付の「保育所施設整備の基本的な方針について」で13時間の延長保育に対応する保育所を優先すると規定し、対応しない保育所については補助対象から除外する方針を出した。保育ポリシーから長時間保育を実施したくないと考えている保育所は補助から永遠に除外されてしまう。
このような強圧的な方針を打ち出しながら、「行政自らが仕組みを作り、行政がコントロールする形の福祉は都民のニーズに応えられず、破綻をきたすことがわかってきた」と矛盾したことを述べている。これにはあいた口がふさがらなかった。
この9月に、厚生労働省子ども家庭局・岩田局長は「働き方を考えずして保育問題の解決は図れない」と明言された。現在の社会補償給付費のうち、高齢者関係は67%を占めるのに対し、子ども・家庭関係はたかだか3%(厚生労働大臣主宰・少子化社会を考える懇談会・中間とりまとめ)ということだ。国が「子どもを育てたい、育てて良かったと思える社会をつくる」として子どもや家庭に視点を向けてきているのに、都・福祉局は労働施策一辺倒の保育施策を推進している。一体何を考えているのだろう。
市場・競争原理を持ち込めば全て問題が解決するのではという「予定調和論(思いこみ論)」で事が進む。かつてバブル経済の時代、冷静に考えればおかしいと思わざるを得ない状況にありながら、それに気づかず、結果として手痛い仕打ちを受け、未だにそれから立ち直れないでいる。
施策担当者の思い込みで施策を実効してもらっては困る。その施策が成功するかどうかの見極めをチェックする制度や第三者評価機構が欲しい。社会施策をこんな実験のような形で進めて良いのだろうか。失敗したら誰が責任を取ってくれるのだろうか。このまま福祉改革ステップ2が進められたら東京の社会はどうなってしまうのだろうか。この施策は都民のためにならないと私は断言したい。
平成14年10月1日
社会福祉法人同志舎 共励保育園
理事長 長田安司
連絡先:
〒192-0046
東京都八王子市明神町1-9-20
電 話:042-631-4670
ファックス:042-631-4671
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