実践記録

実践記録

TaniSensei.jpeg文/谷 恵子(すみれ組)

はじめに

3月下旬、新年度の担任が発表されると、今年はどんな遊びを子どもたちと一年間していこうかと考えます。4歳児を初めて担当する保育士もいれば、何度か経験したことのある保育士もいます。そこで、4歳の発達の特徴を確認しあった上で、それぞれがどんな遊びをしていきたいか考えてくるのです。

発達と一言に言っても、体の面、言葉の面、数の面、造形、絵画、音楽、運動の面、人との関わりや心の面とあげていけば、まだまだ考えられる部分ではありますが、幸いにして、私が勤めている保育園では、これらに関する研究がなされ、基本的なカリキュラムは領域別に年齢を考慮してまとめられているため、初めて4歳児を担当する保育士でも、4歳児の特徴はつかみやすいものになっています。

今回4歳児を担当した3名の中で、特に気になったのは、心の発達の面でした。それは、ちょうど家庭崩壊、学級崩壊がさわがれだした時期でもありました。何でも「自分で!」という1歳~2歳、自分だけではなく他の子のことへの意識も始まる2歳~3歳はじめ、そして、みんな同じに行動しようとする3歳、自我の確立がなされる中で、自己主張と他者を受け入れる気持ちのあいだに矛盾が拡大し、心の葛藤を繰り返す3歳後半の子どもたちから社会的規範にしたがって自我を形成する「自分はこう思う、だけれども○○する」と言った社会的自我の始まりともいえる4歳の子どもたちです。

さて、どんな遊びを展開していくと、この自我の確立のお手伝いをしてあげることができるのだろうか?心の面でのポイントでもありました。

今の世の中の子どもたちを考えた時に、「何だか、自分がよければそれでいいっていうところがあるよね」「あやまっても言葉として、言っているだけのようなところがある。」「喧嘩をしても、本当に力づくで、見ていて怖いって感じる時がある。」「自分が思っていることを相手に伝える、どう表現したらいいかわからない子が増えてきているよね。」「自分の主張もし、相手の主張もうけいれられるようになるこの時期の子どもたち、少しでも相手のことを考えることのできる子に育ってもらいたいね。」・・・等、自分たちが今思っていること、4歳という年齢にとらわれずに意見を出しあいました。

親と子の関わりの面で考えた時に「今の親の中には保育園に預けてしまえばそれっきり、子どもに無関心な親が増えてきているような気がする。」「確かに仕事をしながら子育てをすることは大変、でも成長のめざましい子どもたちと毎日接している保育士が一番いいところを見ている。その部分をお母さんたちは、気付いているのだろうか?」「毎日の忙しさに流されて、子育てする喜びや楽しさを忘れていないか?」「その反面、子どもには関心があるが、それが他の子との比較だけになっていないのか?」「子どものことを理解し、どれだけ家族の一員として認めてあげているのだろうか?」「子どもは、すごくお母さんやお父さんを求めているのに『忙しい、忙しい』で、それに答えてあげていない親が増えている気がする。なんだか寂しいね。親子の絆が少しでも強くなるような関わりがもてるといいね。」等、保育園の中だけではなく、家庭の中の子どもにも目を向け話し合っていきました。

次に、「保育士と子どもだけではなく、子どもと子ども、子どもと親、子どもと保育園全体の人との関わりが持てる遊びはないだろうか」という話になりました。何か、ごっこ遊びが展開できたら楽しいだろうと、3人の保育士の中にはあったため、考えられるごっこ遊びをあげていきました。「電車ごっこなんてどう? 切符を作ったり、小さいお友達をお客さんにしてあげたりすると、関わりも深まるし・・・」「お店屋さんごっこはどう? 品物つくるだけじゃなくて、お金を作ったり、広告作ったり、数遊びやひらがなにもふれられるよ。」

そんな中で、出てきたのが、「郵便ごっこ」でした。保育士の一人が、「小学校の頃から文通していて、今でも箱にたくさん残っているよ。」という話から、「手紙って、心のやり取りもできるし、残るから思い出になるよね。」「郵便局の仕事だって、実際に郵便局に行ったり、本で調べればわかるし、郵便屋さんって手紙を配るだけじゃなくて、はがきや切手も売っている。子どもたちと作って、保育園のお友達や先生に買ってもらえれば楽しいよね。」「はーい、ゆうびんです! なんて楽しそうだよね。」と、話は盛り上がっていく中で、問題発生!!「ちょっと待って、今の子どもたちって、手紙を書かなくたって電話があるから、伝えたいことは、電話で話すんじゃない。手紙って知っているかな?」「ねえ、それよりもなによりも、まだ、少しひらがなが読めるだけの子どもたちに、手紙なんて書くこと無理じゃないの!」「郵便屋さんはできても手紙がポストに入らなくっちゃ、配達もできないし、年長さんや先生にだしてもらうだけじゃつまらないよね。」「どうしよう・・・」せっかく盛り上がっってきた保育だったのに、また一から考え直すのかとがっかり・・・。

そんな中、「でも、絵手紙っていう手もあるよね。字が書けなくたって、絵を描いてお友達にあげるだけだって、楽しいんじゃないかな?」「そうだよね。夏頃からは、文字スタンプも使っていくつもりだし、ひらがなに興味をもつ、いいチャンスかもしれないよ。」
ちょうど4歳は、ひらがなに興味を持ち出し、読めるようになる時期でもあります。子どもというものは、ひらがな10文字程度読めるようになると、次からは、その文字をきっかけに、あっという間に読めるようになるものです。

「4歳の言語面の発達にも、ぴったりあった、ごっこ遊び」ということで、当初、今年度の総合保育のタイトルは「郵便ごっこ」となったのですが、お手紙に狙いをおきたいという思いから、『れたぁ』というタイトルに決まりました。

手紙というものは、「自分の気持ちを相手に伝えることもできるし、相手の気持ちを手紙を読むことで知ることもできます。遠い人に伝えることもできれば、後になって読み返すこともでき、その時の様子を知ることもできる。」この手紙の良さを、子どもたちにぜひ知らせてあげたい、という気持ちがたくさんありました。

そんな中で、「お手紙を通して、人と人(子と子、子と親、親と親、親と保育園)の関わりを深めよう・相手を思いやる優しい心を養おう・文字への興味を深め文字の世界を楽しもう」というねらいのもとに、総合保育『れたぁ』は、スタートしていきました。

さて、どう導入して、手紙というものに関心を持たせていくか考えていった時に、「やはり、実際に誰かから子どもたちあてに手紙が送られてくるのが一番だろう」ということになりました。「さて、誰から?」私たちの保育園は東京の郊外に位置しています。

八王子市の西のはずれにあります。まだまだ自然がたくさん残っている地域であるため、この自然、四季の変化に気付かせてあげたいという思いから、架空の人物“ふう”という物を作りあげました。これは、Who(だれ?)ともHoo!(かぜ)とも意味しますが子どもたちの中には、風の子“ふう”として存在していきました。

空想の世界で遊びきれる3歳から、現実の世界に入ってきた4歳の子どもたちですが、まだまだ空想と現実を行ったりきたりできる年齢です。風の子“ふう”から季節の便りが届くのを導入として、お手紙ごっこ、郵便ごっこ、お家の人とのやりとりを通して、一年間『れたぁ』という総合保育を展開していきました。

この『れたぁ』という保育が自分たちの頭の中で整理しやすいよう、また遊びに広げやすいようと、4つのサブタイトルをおき、活動をわけて考えていきました。

1:しぜんれたぁ/いろいろれたぁ

  • 風の子「ふう」からの手紙・季節のたより
    • あさがおの種プレゼント
    • 何もかいていない手紙
  • なぞなぞ博士からの手紙
    • なぞなぞあそび
    • しりとりあそび
  • がんばりカード

2:こころのれたぁ

  • ミニミニレター
  • ラブカード
  • バースデーカード
  • 記念日カード
    • 父の日
    • 敬老の日
    • 勤労感謝の日
  • おてがみごっこ
    • レターボックスづくり

3.おうちれたぁ

名前の由来
我が子自慢

4.れたぁで郵便ごっこ

  • 郵便ごっこを作ろう(はがき/切手/便箋/封筒/ポスト/バイク/帽子/かばん)
    • 古切手集め
    • 郵便当番(回収/仕分け/消印押/配達)
    • 郵便局作り(看板/開局ポスター)
    • 郵便局オープン(局員になって切手販売、郵便受け付け)
  • お父さんお母さんから我が子への手紙

以上、4つのサブタイトルをおいたのですが保育を行った結果、もうひとつが加わりました。

5.ひろがったれたぁ

  • 旅先からの手紙・暑中見舞
  • 家庭にて、お友達どうしが本物の郵便で
  • 家族の中で
  • お母さんからのクラスのみんなへ

サブタイトルごとに、お話ししていきたいと思います。

1:しぜんれたぁ/いろいろれたぁ

『しぜんれたぁ』では、自然にふれあいながら季節の変化に目を向けさせたいという思いで、さきほどお話しした、風の子“ふう”より季節の便りが届きました。4月のある日「ちいさな青い花をみつけましたよ。“ふう”」とだけ書かれたはがきが、4才児クラスの部屋に届きました。「だれからきたのかな?」「“ふう”ってかいてあるよ。」「“ふう”ってだれ?」子どもたちは目を輝かせました。みんなで考えましたが、“ふう”の正体はわかりませんでした。

子どもたちは、小さな青い花さがしにでかけ、それが、「オオイヌノフグリ」であることに気付きました。「ちいさい はなだね。」「さわるとポトリっておちちゃうよ。」「あおのなかに きいろがあるよ。」「ほかにも、いろいろな はながさいているね。」「いいにおいがするよ。」「はるだね」「ぽかぽかしているね」と子どもたちは自分が感じたことを言葉として表現し、春を目で、鼻で、体で、心で感じていきました。

このように、“ふう”からの手紙によって、季節の変化に気付かせながら体で感じたことを言葉で表現したり、自分がイメージしたことを言葉におきかえる。また、自分の思いを表現する手だてとなるよう言葉を豊富にしてあげる働きかけをたくさんしていくと同時に、手紙にも興味を持たせていきました。
他にも、あさがおの種が届き、子どもたちと育てていき、花が咲いたらそれを摘んで、はがきに朝顔の花を印刷し、その上に花の汁を使って、色づけして、絵はがきをつくりました。
夏には、何も書いていない手紙が届き、「どうしたんだろう? 何も書いていないね。」という保育士の問いかけに「はさみできったら?」「クーピーでぬったら?」、あぶり出しを知っている子は「火にあてたら」と、こどもたちからいろいろな意見が出ました。

子どもたちの言ったことを実際にやってみました。ハサミで切ろうとすると、「きったらわからなくなっちゃうよ。」という意見がでたのでやめにしましたが、クーピーで上から塗ったり、あぶりだしも子どもたちの前でやってみましたが何の変化もありませんでした。

ある子が「えのぐでぬったら かいてあるかな?」の一言で、黒い絵の具で塗ってみると、「勇気を出してごらん」という字と地図が浮出てきました。

ここで、大切と感じたことは、子どもたちから意見を引き出し、実際やって見ることでした。それまでの体験の豊富さによって意見の出方が違ってくるということです。今回も「あぶりだし」という方法を知っていたのは、家でお兄さんが年賀状をあぶりだししているのを見たことを思い出したことと、はじき絵は、3歳の時に保育の中で体験していたのがきっかけとなりました。このように、いろいろんなことを体験していると、子どもたちの考える幅も広がってくるということを痛感しました。

このみえない手紙は、毎年行われる児童館でのお化け屋敷への招待状でした。お化け屋敷を経験した子どもたちは、もちろん、新聞紙を使っての、お化け屋敷ごっこへと遊びが発展していきました。

ある日、“ふう”以外からも、なぞなぞ博士という人物から、いろいろなはがきが届きました。「こんにちは、わしのなぞなぞに答えられるかな?答えを送ってね。『いつもじぶんのいえを、せなかにせおってくらしているむしって なあに?』というクイズの往復はがきに子どもたちは答えを考え、返信用はがきに書いて送りかえしました。

答えがあっていると“おめでとうカード”というものが届いたり、「このはがきは、しりとりだよ。やってごらん。」と、しりとりはがきが送られてきて答えをスタンプで押したりしました。子どもたちは、すぐに答えを考えだし、喜んでスタンプで押していました。

しりとりはがきは、ひらがなのまだ読めない子にも、次を見れば前の文字の答えが分かるので、楽しく文字に触れることができました。これらのはがきは、子どもたちが十分楽しめるように、何種類か用意しました。また、答えをうめていくのに文字スタンプを利用しましたが、このことは、ひらがなを読むきっかけにもなり、ひらがなを書きたいけれどまだ書けないジレンマの中の子どもたちにとって、よい道具となりました。

“がんばりカード”は、何か頑張るとシールが1つもらえ、5つためるとメダルが送られてくるというものでした。自分のことは自分でやってみよう、使った物は片付けようなど意欲を持って行動できるようにとしかけた遊びです。

始めはシール欲しさに、「せんせい、うわばきをそろえたよ。」「ほんだなきれいにしたよ。」と言ってきた子どもたちでした。がんばりカードがなくなったらやらなくなってしまうのではないかという保育士の不安は大きくはずれ、カードがなくなっても、トイレのスリッパをそろえてくれたり、本をきれいになおしてくれたりと、自主性が身についてくれたことは、とてもうれしい結果を残してくれました。

2:こころのれたぁ

“ふう”からの手紙で、総合保育の導入はできたものの、一体どう子どもたちにお手紙ごっこを浸透させていこうかと悩みました。

悩んでいても仕方がないので、ひとまず5×8センチ位の小さなカード(これは、保育士が利用したラシャ紙のはんぱで残ったものを利用しました)を、保育士の机の上に用意しておき、自由に子どもたちが使えるようにしておきました。

子どもたちはそのカードに、絵を描き始めたので、「誰かにあげるの?」と問いかけ、言った子の名前や書いた子の名前を保育士がカードに書いてあげました。この小さな“ミニミニカード”が、お手紙ごっこの始まりとなりました。

「はい、あげる!」で始まったやりとりが「はい、手紙!」になっていきました。渡す相手は、始めは保育士でした。事前に、保育園にいる先生たちには、「今年、年中組は、こんな保育をして遊びます。」ということを伝えてありますので、カードをもらった先生はお返事を書いてくれました。

あげるともらえるうれしさを感じた子どもたちは、保育園中の先生に渡して歩きました。この、手紙を渡しにいくという、どの部屋にも遊びに行けるというのも、子どもたちの魅力の一つでした。時々、ひよこ組のお友達がお昼寝中に、にぎやかに渡しに行き、「この時間はだめだけれど、時計のながい針が12、短い針が3になったらまたきていいよ。」と、声をかけられたりしましたが、このことで子どもたちは、時間の経過(時間の読み方)について触れたり、保育園の中には、いろいろな年齢のお友達がいることに気付いたようです。保育士が教えるのではなく、子どもたちが必要な時に、生活の中で身につけることができる保育園の良さを感じる場面でもありました。

先生の中でも、園長先生の所に渡しにいくのは、特に大好きでした。園長先生のお部屋は、事務室の奥にあります。ですので、事務室の入り口で、「えんちょうせんせい いますか?」と声をかけ、「しつれいします。」と入っていきます。この挨拶は全員に知らせたわけではなく、始めに2~3人の子どもたちに知らせただけで、広がって行ったものです。何だか特別な部屋に入れるといううれしさと、園長先生からの素敵なお返事が、子どもたちの魅力だったようです。園長先生からのお返事は、素敵な毛筆で書かれ、時には、キラキラ光るシールが貼ってあったり、色づいたさくらの葉が貼ってあったりしました。忙しいのに、時間をみつけてはお返事を書いて届けてくれた園長先生は、私たちの保育を盛り上げてくれた一人でもありました。

先生に渡していたカードが、クラスのお友達に出すようになり、小さいお友達、年長組のお友達へと広がっていきました。始めのうちは、カードに絵を書いていたものが、保育士がはがきを用意してあげたことで文字を書く場所ができ、絵に文字スタンプで押した一言が加わるようになりました。
自分の思いや考えを頭の中で組み立てて、言葉にする。言葉にしたものを保育士は文字にかえられるよう後押ししてあげていきました。「あそぼうね」「げんきですか」「かぜひかないでね」カードが、気持ちの入ったお手紙へと変わって行ったのです。

1月頃には、自分の思っていることを文章にする子も出てきました。また、字を書きたくて書きたくて、鉛筆で自分の名前を書きだす子もでてきました。まだ、ひらがなを書くには、早いと感じますが、何より子どものやる気が大切ですから、書きたい子には、鉛筆、サインペンと用意し、自由に使えるようにしてあげました。

一方で、筆順や鉛筆の持ち方については、その都度、直してあげる言葉がけをしていきました。しかしまだ、この書くは一部でした。もっぱら文字スタンプが主流で遊んでいきました。

お手紙もたくさんになったので6月の保育参観にて空き箱に包装紙を貼ったり、リボンをつけたり、お家の人と一緒にレターボックス作りをしました。このレターボックスに大切なお手紙をしまっていきました。中には箱がお手紙でいっぱいになり2箱目を作って持ってくる子もいました。このレターボックスは子どもたちの宝物をなると思います。大人になった時に、そっと開けて保育園時代のことを思い出してくれたらな・・・と保育士は願っています。

お友達に興味を持ってもらう、お友達のことを考えられるように育ってもらいたいという願いで毎月誕生日のお友達に、誕生カードを子ども一人一人が作り手渡しました。初めはケーキの印刷物を塗るだけだったのが、自分の名前をスタンプで入れたり、「○○ちゃんおめでとう」とお祝いの言葉を入れるようになりました。この活動は誕生日の子が多い月には4人位いて、どうなるだろうと思っていたのですが、子どもたちはそんな保育士の心配をよそにその子の誕生日の日にはカードを持ってきてカード作りを始めていました。子どもたちの心の中には、自分の誕生日にはみんなからもらえるという期待と友達のお誕生日をお祝いしようというやさしい心があったようです。

カードをもらったお友達はもちろんお家の人から、「こんなすてきなカードをありがとう、1枚1枚大切に読みました。」うれしっくて、○○ちゃんのお母さん「涙がでました。このカードは○○ちゃんの宝物です。本当にありがとう」というお返事のお手紙をいただいたほどです。

他にも、記念日を知らせる意味でも、父の日、敬老の日、勤労感謝の日にお手紙を出しました。父の日には6月の保育参観の時、お母さんと一緒に、お父さんに手紙を書きました。はがきに子どもたちは絵を書きました。それにお母さんの分を加えて、後日子どもたちと保育士で近くのポストにはがきを出しに行きました。

ポストの横に何やら数字が書いてあるのに気付いた子どもたちでした。その数字はポストに入っている手紙を集めにくる時間であると知らせることができました。このことは、この時点では保育士側は意図していなかったことなのですが、後々郵便ごっこをしていく上で、「ポストに入ったはがきは郵便屋さんが集めに来る」「はがきは回収しなければならない」と気付く良い結果となりました。

敬老の日にもカードを作っておじいちゃん、おばあちゃんに送りました。お家の方にも4月の懇談会の際、今年の保育の流れやねらいについてはお話ししてあり、できたらお返事を保育園に送っていただけるようにお話ししておきました。

お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんから保育園に返事が届きました。子どもたちはいつ自分のが来るかとワクワクしてまっていました。きっとお父さんも子どもに手紙を書くなんて初めてのことだったと思います。改まって子どもに手紙を書くのに「何て書いていいかわからなかった、ちょっと恥ずかしかったな」というお父さんの声も聞かれました。中には遠く鹿児島のおじいちゃんからお返事をもらった子もいました。いろいろな所に住んでいる人がいることを知らせることができました。

また、“ラブカード”と称してその子のこんなところが好きです。といった、自分の気持ちを表現したり、その子を認めてあげる活動をしました。

このように、名前や自分の気持ちを文字スタンプを利用して押していきました。

3:おうちれたぁ

忙しい毎日の中、子どものことを考える時間を少しでも持ってもらえたらという思いで『おうちれたぁ』が始まりました。生まれた時の体重、そして名前の由来について書いてもらい、クラスの中で回覧板として回しました。

「ああ、そういえば生まれた時はこんなだったんだ。お父さんとお母さんはこんな思いで、名前をつけたのよ。」と家族の中で話し合え、その子と向き合う時間が持てる、また、回覧で回ってくことにより、友達のことを知ったり、自分の子どもと仲の良い子の話がでたり、子どもの友達が家族の中で身近な存在となってくれたことと思います。

“我が子自慢”というものも書いてもらいました。「親がいうのもなんですが・・・」という書き出しに答えてお家の人に我が子の自慢を書いてもらうのです。

「うちの子は○○が得意です」「お手伝いたくさんしてくれます」など、良いところをたくさん書いてもらいました。子どもたちはこの手紙を読むことで「自分はこんなに家族に大切にしてもらっているんだ、家族の人にこんなに認めてもらっているんだ」と自信がついたようです。お家の人にとっても我が子を家族をみつめなおすよい機会となったのではないかと思います。

子どもたちも回覧板を持ってかえるのをとてもたのしみにしていました。回覧板を持って帰る子どもたちはちょぴり郵便屋さんの気分だったようです。この活動には全員の方が参加してくれたことを、とても嬉しく思いました。

4:れたぁで郵便ごっこ

お手紙ごっこが定着してきた所で、郵便ごっこに発展させて行きたいと思い、9月のある日、大きな段ボールで作ったポストを保育室前の広場においておきました。

誰か気付いて、手紙をポストに入れてくれないかと期待していたのですがそれは見事にはずれて、いつまでたってもポストは空のまま、子どもたちは相変わらず手渡しで交換しています。

そこで、郵便が届く仕組みを絵に現わし子どもたちと話し合っていきました。その中で子どもたちは、お父さんに手紙を出しに行った時、手紙を集めに来る時間があることを思い出したり、手紙は切手を貼らないといけないことに気付きました。

そこで本当に届いた手紙を見ると宛名と自分の名前、切手、郵便番号、住所、消印があることに気付きました。郵便番号や住所は、今回はまだ難しいのでふれないことにしました。手紙は切手を貼って、ポストに入れ、郵便屋さんはポストから手紙を出して消印を押し、仕分けをして配るという遊びのルールをみんなで作っていきました。

ルールを作ることにより、子どもたちが手順がわかりやすくなることと、郵便の仕組がわからない子が、活動していく上での手だてとなると思います。

初めは郵便屋さんはその日のお当番さんが行うことにしました。切手を貼るという楽しみが加わったため、お手紙ごっこは更に盛り上がってきました。子どもたちも自分が当番の日を楽しみにまっていました。字がまだ読めない子には読める子が読んであげ、一人で配ってしまうのではなく、ちゃんと全員で配れるように分けるリーダー的な子も出てきました。保育士が何もいわなくても子どもどうし助け合う姿が見られたのは大きな成果だったと思います。私たちがねらいとしている「人と人との関わりを深める。相手を思いやる優しい心を養う。」という気持ちが少しずつ子どもたちに芽生えてくる、こんな嬉しいことはありませんでした。

手紙を配っていくうちにだんだんと配る大変さが出てきました。いつもお部屋にいるとは限りません。その子を探して渡す・・・ある子が「せんせい、わたしのいえにはポストがあるよ。」保育士が、次に子どもたちに仕掛けたいと考えていたことが、子どもの口から言葉として出てきたのです。「そうだよね。みんなのお家にはポストがあるね。すみれ組さんにも一人一人のポストがあると、手紙配るの大変じゃないよね。」となりました。

そこで、テイッシュの箱を利用して、個人ポストをつくり保育室の中に置きました。このことで手紙を配る楽しさ、「手紙が来てないかな?」とポストを開ける楽しさが加わってきました。
郵便屋さんの仕事にははがきを売ったり、切手を売ったりということもあります。そこで子どもたちと一緒に封筒作りをしたり、便箋作り(紙の横に模様をつけたり)や野菜スタンプのはがきを作りました。また、文字スタンプが使えない6月頃には、絵や文字(「またあそぼうね」「うちにおいでよ」)が印刷してあるはがきを用意しました。

このように、お手紙ごっこが子どもたちの中で展開し、興味を持っていない子どもたちが興味を持てるようなきっかけづくりを保育士側が用意してあげることは、大切な部分だと思います。今回も、まだひらがなのあまり読めない6月に、絵と文字を印刷してあるはがきを用意することで、「それまで、絵を書くことが苦手だった子が、色を塗るだけで相手に出すことができ、“出せば返事がもらえる”“もらえるとまた嬉しくて出す”というように、お手紙ごっこに少し興味を持ってくれた」ということがありました。
切手についてはお家の人に呼びかけて全国の珍しい切手を集めました。模造紙2枚にもなり、お家の人の保育に対する関心の深さを実感しました。また、子どもたちも印刷しておいた切手に色塗りをしたりして、切手作りもしました。

私たちの保育園では、2月に一年間遊んできた様子をお家の人に見ていただけるよう保育展というものを行っています。そこでこれだけ郵便ごっこが盛り上がってきたのだから保育展当日、「ちびっこ郵便局」を開いてはどうかということを子どもたちに持ちかけました。子どもたちはすぐにのってきました。早速ちびっこ郵便局オープンに向けての準備が1月から始まりました。

郵便局に必要な物を話し合い、看板、ポスト、バイク、帽子、切手、はがき、便箋を用意していきました。オープン一週間前にはポスターを作り、年中以外のクラスに出向き、「2月13日、たんぽぽぐみのお部屋に、ちびっこ郵便局がオープンします。ぜひ、来てください。」とお知らせして歩き、ポスターを貼らせてもらいました。

保育展当日、子どもたちはどんなことをしたかというと、子どもたちは郵便局員になって、服と帽子を身につけ、お客さんに切手やはがきを売りました。お客さんは保育展を見にきてくれたお友達、お母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、お兄さん、お姉さん・・・全員がお客さんです。何通も書いてくれる人もいて、大盛況でした。子どもたちも入れ替わり、たちかわり、郵便局の中が空っぽになることなくよく働いていました。

この保育展当日、子どもたちがびっくりすることが一つ待っていたのです。それは、前もって子どもたちには内緒でお家の人にお願いしておいた子ども宛へのお手紙でした。お家の人は、自分の子の一年を振り返って、成長したこと、育った心など気持ちの込められた我が子宛のお手紙をお願いし、保育士にそっと渡しておいてもらいました。その手紙を前日の夜一人一人のポストに保育士が入れておいたのです。子どもたちには、前日に「明日来ると、素敵な手紙がポストに入っているかもしれないから、保育展に来たら見てね。」と伝えておきました。

手紙の内容は、もちろん保育士も知りませんでした。保育展にやってきた子どもたちは、まず、自分のポストを開けて、手紙を取り出したました。ひらがなで書いていただいたので、子どもも一人で読むことができます。

たくさんあるお手紙の中から、1つ紹介しましょう。

えんどうたくまくんへ

  • 『ねんちゅうのたっくん。なつには、プールでばたあしができたね。あきには、うんどうかいでかけっこ、レッツゴーいいことあるさ、おうえんだんもすごくがんばったね。ふゆには、じてんしゃにのれるようになったんだよね。ひらがなも たくさん よめるよね。「たくまより」って かきたいって おかあさんに ききにきたとき びっくりしたよ。いつも もらうだけだったおてがみを じぶんでだすんだって はりきっていたたっくん。かっこよかったよ。あやとりもすごいね。ひこうきをつくるのは もうおかあさんより はやくなっちゃたんじゃないかな。(中省略)すこしづつだけどひとつできるようになると たくまはうれしいでしょ。そのとき おかあさんも とってもうれしいんだ。また あたらしいこと やってみようね。まえにできなかったことも もういっかいやろうよ。こんどは できちゃうかもしれないよ。さあ、たっくん つぎは なにをやってみるのかな。えんどうおかあさんより』

長い手紙も、最後まで一人で読み終え、恥ずかしそうに下を向いてニコニコしていたたくまくんでした。どの子も自分の手紙を読み終えた後みせてくれた笑顔は、忘れることができません。そんな中で、ある女の子は読みながら涙を浮かべていました。その手紙は

だいすきな なるみちゃん

『まいにち ほいくえんがっばっていますね。おむかえにいくとき けんたがねていると けんたの おにもつもってくれて おかあさん とても たすかります。これからも やさしく そして きょうだい なかよしの なるみでいてね。 おかあさんより』

いつも、お母さんは仕事に追われ、姉と弟の間で育つ女の子で、どちらかというとしっかりものとして過ごしていた子ですから、自分のことを思ってくれているお母さんの気持ちを感じ取り涙したのだと思います。その様子を横でみていたお母さんも嬉しそうでした。ちょうど、感受性の強まるこの4歳の時期に、お家の人から、こんな素敵な手紙をもらった子どもたちです。心の面でも成長してくれたと嬉しく思いました。子どもたちに届いたお家の人からの手紙は、掲示板に貼りだし、たくさんの人に読んでいただきました。

お家の方には、忙しい時間の中、大変だったとは思いますがその子のことを考えたり、その子のために時間をつくるということは、決して無駄ではなかったと思います。どの手紙からも、その子に対する愛情がたっぷりと感じられるものでした。ワープロやパソコンもいいですが、やっぱり手紙は手書きが一番です。その人の愛情が伝わってきます。

あるお母さんから、「子どものことをこんなに一年振り返ったことがなかった。先生方からこんな機会をもらわなければ、きっといつものように流されてしまっていたんでしょうね。子どもとお手紙のやりとりなんて考えてもいなかったけど、親もいつの間にか保育の中にはいっていた。先生・・・一年間親も遊ばさせてもらいました。」という、嬉しい声をかけてくれる方もいました。郵便局は、年中組が終わるまで続けられた活動です。

5:ひろがったれたぁ

『れたぁ』という総合保育を展開していった中で、一年を振り返ってみて、「こんなにお手紙が広がっていったんだ」と感じることがたくさんありました。
旅行に行ったら、その場所から、保育園宛に手紙がもらえると嬉しいと伝えておいたので、暑中見舞や旅の報告がたくさん届きました。中には、シンガポールに出張に行っているお父さんから届いた手紙もありました。また、夏に保育園に遊びにきたオランダのお友達からも何度かお手紙をいただきました。そのお友達のお父さんから、英語の手紙が届いて、保育士が“ドキッ”とする場面もありました。小さな国際交流ができた一コマです。
保育園には、このようにいろいろな方からお手紙をいただきました。ある時は、お姉ちゃんからクラスのお友達へ、また、お母さんから保育士へ等です。内容はお料理報告、発表会の感想等いろいろでした。口で伝えればそれで終わってしまうことでも、手紙に書いていただくと、たくさんの方に紹介することができました。これは、保育士の知らないところで広がっていたお手紙ごっこだったのですが、お家の中で家族同士でのやりとりもあったようです。
他にも、お友達どうし、本物のはがきを使い、本物の郵便でやりとりを楽しんでいたと、後で知りました。これは、私たち保育士が想像していなかった展開でもあり、とても嬉しく思いました。知らないところで広がりを見せていたお手紙ごっこ・・・子どもたちにとっても、私たち保育士にとってもとても良い経験となりました。

おわりに

以上が、保育実践報告です。流れは、サブタイトルの流れではなく、いろいろな活動が組み合わさって、保育が展開されたことをご承知ください。
この一年間に子どもたちのレターボックスには、お手紙が次々にたまっていきました。中には、100通以上の手紙を持っている子もいます。大きくなった時、自分のレターボックスを開けて手紙を読み返し、「あぁ、保育園の時こんなことしたな・・・・」「お父さんからの手紙は嬉しかった」「お母さんは、私のことこんな風に思ってくれていたんだ」と思い出してくれたらいいなと思っています。そして、この思いを自分が親になった時に、自分の子どもにも伝えてくれたらこんな嬉しいことはありません。
手紙が友達や家族をつなぐ。この手紙は、一生の宝物になってくれると思います。
一年を振り返ると、この総合保育を始めた頃は、「一体どう展開していくんだろう」という不安な気持ちがあったのですが、遊んでいくうちに、そんな不安も取り除かれ、いつしか子どもたちだけでなく、保育士も遊びの中に入り込んでいった保育でした。遊んでいる時は夢中だったので、終わってみて「どうだった?」と考えたとき、「あー楽しかったね。」と、保育士が語り合える保育でした。
この保育のねらいである、『人と人(子と子、子と親、親と親、親と保育園)の関わりを深めよう。相手を思いやる優しい心を養おう。文字への興味を深め、文字の世界を楽しもう。』が遊んでいく中で、しっかり根付いていってくれたと思います。
口でいっただけでは、なかなか伝えることができない気持ちの部分を、保育士だけではなく、お母さん、お父さんの協力によって育てて上げることができたと思います。クラスの中で始まったお手紙ごっこが、保育園に広がり、家庭に広がり、そして、友達どうしへといろいろ広がっていきました。
あるお母さんが最後に、「お手紙ごっこよかったね。だって、自分の気持ちを素直に表現できるなんてなかなかできないよ。それに、ひらがなも教えたわけでもないのに自然に覚えてきて、今度は書きたいという気持ちが強くなって、自分で書き出す。無理やり教えるんじゃなくて、必要にせまられて自分でやろうとする気持ちが育つなんて一番いいことだよね。」といってくれました。
このお母さんは、書くことも好きで、よくクラスのお友達宛に手紙をくれたお母さんでもあります。他にも「お父さんの仕事が忙しくてなかなか夜会えないけど、お手紙のやりとりを始めて、まるで交換日記をしているみたいに楽しんでいる。」という声もいただきました。家族の絆が、だんだんと薄れていっているように感じる世の中で、少しでも家族の結び付きが強まったように思い、嬉しさで一杯になりました。この保育は、たんぽぽ組、すみれ組というクラスだけではなく、保育士全員、保育園全体、そして、家族も一緒になった保育だったと思います。
人と人とのつながりや思いが育つためには、環境が大切です。社会全体に温かい雰囲気が広がればどれだけ素敵でしょうか。時間に追われる生活をしている私たちには、そのようなことが、どんどん失われています。せめて、子どもたちが育つ一部である保育園という環境の中では、温かい環境が確保されたいものです。
そして、忙しいお父さんやお母さんにも、一番大切な子育て時期を、ただ、流されていってしまうのではなく、少しでも子どもと関わり、自分の子どもを見つめる時間が作れるよう、これからも保育士側が働きかけていく必要があると感じました。
親にとって便利な保育園ではなくて、子どもが成長していく上で手助けのできる保育園でありたいと思います。そして保育園を利用することで温かい家庭ができ、親子が共に育ち、親子の絆が強く結ばれることを望みます。
子どもたちは、保育園に通う乳幼児期に人間としてのとても大切なことを獲得しています。そういったことを十分保障することができる保育実践をこれからも心がけていきたいです。

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